令和3年11月24日代表質問(令和3年千代田区議会第4回定例会議事速記録より)

社会状況は絶えず変化していますが、新型コロナウイルス感染症は、以前から進行していた諸問題を顕著化させました。特に昨今では、コロナ禍における新しい生活とデジタル化の進展は、これまでにない大きな変化です。
区の施策の方向性も、これに伴い抜本的な考え方を変換し、デジタル革新により新型コロナウイルス感染症を乗り越え、区民本位の幸福な区政の確立を目指し、様々な施策に取り組む必要があります。
これらの状況を踏まえて、本日は、今後の区政進展の取組の一助となることを願い、5項目の質問をいたします。

初めに、区の組織及び人員体制です。

 

急激な少子高齢化に直面している我が国では、労働力人口は既に減少しており、今後の人員確保が課題となっております。一方、本区は、当分の間、人口の増加が想定されており、区民ニーズの複雑化、多様化も相まって、行政需要は増大するものと推測されます。
本区において、以前から、行政事務の効率化推進や民間開放など、内部努力により生み出した人的資源を行政が担うべき分野に振り向け、サービス向上につなげる努力をしております。しかしながら、現在、本区の管理・監督職の配置は事務取扱や兼務が多く、コロナ禍への対応やデジタル化の推進など、重要課題に対応する人材確保については危機感を抱かざるを得ません。
また、本区は、職員の年齢構成がいびつで、中堅層が薄くなっています。ベテラン職員と経験の浅い職員が、本来であれば中間職員が担う職域をそれぞれがカバーしているため、経験と職務のミスマッチを起こす例もあると推察されます。これに加えて、最近は、経験豊かな職員も年度途中の退職が発生しているため、ベテラン職員の抜けた穴を経験の浅い職員が埋めざるを得ず、人材不足が深刻化し、組織が弱体化することが危惧されます。

そこで伺います。
本区は、現在の人員体制についてどのように認識し、今後どのように対応していくのか、基本的な考え方をお答えください。また、経験豊かな職員の中途退職が増えるなど、人材不足が深刻化しております。こうした状況に対する認識と組織への影響、今後の対応策について、お答えください。

 

このような中、喫緊の課題は、いまだ行き先の不透明なコロナ禍に対応するための保健所の体制強化やデジタル化の推進に向けた体制整備です。コロナ禍により全国各地の保健所の体制は大変逼迫しました。本区でも職員の様々な努力によって難局を乗り切ってきたことには、心から敬意を表します。
しかし、保健所については、今後起こり得る感染拡大への備えや、管理職の欠員による体制の見直しに加え、将来的な体制整備については検討が必要です。また、デジタル化の推進については、現在、着実に歩みを進めているものの、当分の間はアナログの対応も不可避です。現在の体制のままで、それを両立していくことができるか、危機感を抱いております。

そこでお伺いいたします。
喫緊の課題となっている保健所の体制強化、デジタル化の推進体制等に関する検討の方向性について、見解をお聞かせください。

 

次に、新型コロナウイルス感染対策について質問いたします。

 

新型コロナウイルス感染対策のうち、感染者対応とワクチン接種についてです。11月12日、政府は新型コロナウイルス感染の「第6波」に向けた総合対策の全体像を決定しました。今月7月から8月、新型コロナウイルス感染症は、感染力の強いデルタ株の影響で感染者が爆発的に増加した「第5波」の状況、課題を踏まえて、医療提供体制の強化、治療薬の確保、ワクチン、無症状者への検査などが盛り込まれています。このうち、医療体制の強化は命に直結する問題です。新型コロナウイルス感染症法では、第二類感染症に分類され、感染者は全員入院対象です。新型コロナウイルス感染が確認された昨年から、入院対応できる病床の不足が課題とされていました。感染爆発が起きた第5波では、入院ができずに自宅療養者が激増し、症状が悪化することへの不安を抱え、急変した場合にも対応が遅れる事例、自宅で亡くなる悲劇も報じられたことは記憶に新しいところであります。
基礎疾患があっても入院できず、ホテル療養もできず、自宅待機、自宅療養を強いられた人が、東京都全体で最大6,000人近くになりました。

そこでお伺いいたします。
千代田区での自宅療養者は、最大で何人いたのでしょうか。また、新型コロナウイルスに感染し、陽性が確認されても、保健所からの連絡がない、来ないという事例もあったと聞いています。千代田区では、陽性が確認された場合、ファーストコンタクトまでに数日を要する事例があったのでしょうか。お答えください。

 

千代田保健所は、区民の命を守るために、自宅療養者に対して独自に食料や水、パルスオキシメーターを配送し、症状が悪化した場合に備えて、地区医師会や病院と連携して、オンライン診療、酸素濃縮器を活用などができる体制を構築するなど、非常なご苦労があったと思います。
このように苦労して構築したシステムが、今後懸念される第6波で効果的に機能するように、第5波での実績、実態を検証することは重要であります。今まで構築した仕組みがどの程度機能したのでしょうか。パルスオキシメーターの貸与、オンライン診療が実施された件と、実績を踏まえた課題をどのように把握されているのでしょうか。
新型コロナウイルス感染対策の切り札と言われるワクチン接種は、医療従事者への接種に始まり、高齢者接種が4月上旬に開始されましたが、本区には5月にワクチンが提供され、高齢者を対象に接種が始まったのが5月下旬でした。この間、予約時の混乱、ワクチン不足など様々な報道がありましたが、本区では極めて順調に接種が進み、当初計画で目標とした接種率8割を10月中に達成し、現時点では12歳以上の対象者の実に82%が2回目の接種を終えています。
第5波の期間、ワクチン接種も接種率向上を目指し、若い世代への積極的な周知が行われていた時期でもありました。感染症の最前線に立つ保健所は、保健師だけでなく、事務職の方々、特にワクチン接種の担当職員の皆さんは大変な努力をされ、苦労されたことでしょう。奮闘された職員の皆様に敬意を表し、感謝を申し上げます。
しかし、時間の経過とともにワクチンの効果が低下することから、2回目の接種を終えておおむね8か月以降に追加の接種をすることが決定いたしました。広報千代田で3回目の接種券発送が報じられています。先日の報道では、3回目の接種を、2回目終了後8か月から6か月に2か月短縮する可能性もあることなど、国の方針が流動的で、実務を担う区は対応に苦慮されていると思います。

そこでお伺いします。
現時点で接種券の発送や予約方法、接種会場など、どのように準備されているのか、お伺いいたします。

 

次に、本区のDXの取組の進捗状況についてお伺いいたします。

 

世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、社会情勢は激変しました。こうした状況下、区民の新しい生活や地域経済活動を維持していく観点から、これまでデジタル化が進まなかった様々な領域を含め、デジタルの活用が一層加速しています。最近、日常生活では当たり前のようにデジタル技術の恩恵に浴して、便利さを享受していますが、千代田区ではいまだにそれをサービスに活用できていないと感じています。アフターコロナにおいて、区民の新しい生活(暮らし)を支えるのがデジタルです。また、それを手段としたDXの推進は、利便性の向上を図ることはもちろん、人々の生活をあらゆる面で豊かに、よい方向に変化させることを目的としています。

そこでお伺いいたします。
アフターコロナを見据えた区のデジタル化の推進について、現在の取組状況と今後の実現性について、お聞かせください。

 

DXを本格的に展開していくためには、既存システムの刷新が必要であり、障害対応やセキュリティの確保など、全体を俯瞰し、一貫性を持ったシステムの構築が求められ、こうした観点から内部の統制を執る、いわゆるガバナンスを利かせることが必要であると考えます。また、各部は、個別の最適化を優先し、それぞれにシステムを導入してきた結果、区全体での情報管理が困難な状態となっていないでしょうか。全庁的な最適化が図れない現状で最先端の技術を導入したとしても、データ活用や、その連携が限定的となってしまい、その効果も半減してしまいます。
例えば、公文書の管理・活用についても、デジタル化により、そのデータの活用が促進され、情報公開請求への対応など、区民サービスの利便性の向上と業務の効率化に資することが見込まれます。

そこでお伺いいたします。
DX推進に向けて、個別システムの全庁的なガバナンスを利かせて刷新していく必要性について、区のご見解をお聞かせください。また、公文書の在り方や情報公開請求への対応など、どのように改善されているのでしょうか、併せてお答えください。

 

行政ニーズが増大化・多様化している中、生産年齢人口の減少に伴うマンパワーの不足に対応していくためには、デジタル技術を活用した行政サービスの効率化・高度化が不可欠であります。そのため、あらゆる分野においてDXの推進を担っていくためにふさわしい人材の確保、養成が求められています。一方、DXの推進に当たる人材の配置は、適材適所に行われなくてはなりません。たとえ豊富な知識や経験を有した人材が確保できたとしても、縦割り組織のしがらみ等に
縛られてしまっては、改革を進めることはできません。
また、DXの推進は、デジタルの名前がついているだけで情報システム部門の仕事だと考えず、区職員全員に関わる問題であり、職員は、所管のみの改善にとどまらず、組織全体の進め方を変えていくという視点を持った人材が必要であると考えます。

そこでお伺いいたします。
DXの推進に当たり、必要な人材の確保や職員全体のITリテラシー(情報活用能力)をどのように向上させていくのか、ご見解をお聞かせください。

 

次に、出張所の在り方について質問いたします。

新型コロナウイルス感染拡大により、昨年の4月には区民館が貸出し停止となり、町会など様々な団体の総会が書面開催となったのをはじめ、納涼や夏祭り、餅つきなど、これまでコミュニティ活動の中心だった「人と人とが飲食を共にし、懇親を深める」多くの事業が開催できず、コロナ禍は地域コミュニティに深刻な影響を与えました。また、シルバートレーニングスタジオなどの区民館を会場とする区の事業も、中止や定員が半数になるなど、高齢者層を中心に有形無形の影響を受けております。
これからの出張所の在り方を考えていく上で、これまでを振り返り、そこから今後を展望する必要があると考えています。

そこでお伺いいたします。
この1年半、出張所は地域からどのような相談を受け、それに対してどのような支援を行ってきたか。出張所が地域にどのような役割を果たしてきたのか、お答えください。

感染状況が大きく改善し、明るい兆しが見えている今だからこそ、出張所が地域の活動の支援をするべきときではないかと考えています。個人に着目すれば、パソコンやスマホを使いこなせない方々への講習会の開催、コミュニティ活動においては、ホームページの開講やZoom会議の支援など、新たな日常に向け、地域全体の準備を進めることが重要になります。

そこでお伺いします。
これからの出張所は、アナログとデジタルが融合する新しい役割を担うべきだと認識していますが、ご見解をお答えください。

これからDXが進んでいくと、デジタル申請のサポートが増えるとしても、申請手続は大幅に減少し、行政窓口としての出張所はかなり縮小されていくことが見込まれます。
区の多くの事業は縦割りで、あるいはピンポイントで完結してしまいますが、これからのコミュニティ支援の中では、人と人とのつながりの中で潜在的な困り事を的確に把握し、横断的な情報共有を行うことが必要になってくるのではないでしょうか。DX後に出張所に生み出される人的な余力を、地域の人と人とをつなぎ、様々な情報が集まり、広がっていくハブのような役割に使っていくことも有用です。地域には歴史があり、実情も異なり、住んでいる方々の気質も、そこはかとない違いが感じられます。地域の中で人と人とがつながり、そこに情報が結びつくことで、地域の人たちの主体性に働きをかけ、地域に最も身近な出張所が、地域の魅力や個性を発揮する拠点とすることを提案いたします。

そこでお伺いいたします。
これらの提案について、DXの進捗状況を見据え、いつ、どこまで実現可能なのでしょうか。
お答えください。

 

最後に、子育て・教育施策について質問いたします。

子育てをめぐる環境が変化する中、コロナ禍は、人々の生活、働き方、人流にも影響を与え、保育需要は、今までの待機児童対策から保育の質やテレワーク時のスポット預かりなど多様化し、学校現場においては、密にならないよう、登校せずとも、自宅等サテライトで学ぶことができる環境が求められ、いち早く整備しています。こうした変化の激しい予測困難な時代においては、子どもたち自身が主体的に学び、新たな価値を創造していく力がますます求められております。

そこでお伺いいたします。
現在、子育て・教育の在り方は大きく転換期を迎えていると考えますが、改めて、本区の子育て・教育施策のビジョンについて、明快に示すべきではないでしょうか。お答えください。

こうしたことを踏まえ、第3回定例会の決算審議において、施設整備の計画を見直すべきとの私の指摘については、どうなっていますか。「高齢者センター跡地の保育園整備」「和泉小学校・こども園の整備」「和泉ポンプ場跡地利用」については、慎重に検討を行い、区民にとって有意義な建物にすべきだと考えます。また、建て替えをするに当たっては、周囲への説明、理解を得ることが不可欠です。さらに、富士見みらい館は、0歳から18歳までの子どもの成長を総合的に支援するため、「子ども総合施設」としてPFI事業により平成22年に開設し、その契約は令和6年度で期間が満了となります。

そこでお伺いします。
今後の教室数や待機児童数について、どのように見込んでいるのでしょうか。また、今後の施策を展開するに当たっては、まずは児童・生徒数の推計など、基礎的なデータを早急に算出すべきと考えますが、いかがでしょうか。
さらに、高齢者センター跡地の保育園整備、和泉小学校・こども園の整備と和泉ポンプ場跡地利用及び富士見みらい館のPFI終了後の運営やその後のビジョンについて、その進捗も含め、お答えください。

 

続いて、ICT教育の今後の展開について質問いたします。

コロナ禍においても、学校教育における学びの継続と予測困難な時代を生き抜く資質・能力を子どもたちが確実に身につけられるよう、昨年度の補正予算でGIGAスクール構想を前倒しし、区内におけるICT教育環境をいち早く整備を進めてきました。本区におけるICT教育環境は特別区の中でも最も進んでいると認識しています。
また、今年度は、ICT機器及びその環境のリプレースを行い、一部の不具合は生じているものの、セキュリティ対策の強化、利便性や操作性の向上など、子どもや教育現場が安全・安心に、必要とされる教育活動を展開するための対策を講じた環境設備がなされ、その活用についても徐々に進んでいると聞いております。

そこでお伺いいたします。
千代田区のこれからの時代を生き抜く資質・能力を育むため、ICTを活用した今後の教育の展開について、どのように推進していくのか。お答えください。

以上、今回の質問が区政進展の一助となることを願い、区長並びに関係理事者のお考えをお伺いし、千代田区議会自由民主党の代表質問といたします。
どうもありがとうございました。