令和3年11月24日代表質問への回答(令和3年千代田区議会第4回定例会議事速記録より)

〔樋口高顕区長からの回答〕

○区長(樋口高顕君) 小林たかや議員の区の組織・人員体制に関するご質問にお答えいたします。

本区は地方自治体として、将来にわたり、安定的に行政サービスを提供する責務がございます。
それを果たすためには、健全な財政基盤を堅持し、揺るぎない組織・人員体制を確立することが不可欠です。本区の組織・人員体制につきましては、年齢構成や人材確保・人材活用等における構造的な課題があることは、議員ご指摘のとおりであると認識しております。
私は、就任以来、こうした構造的な課題に取り組む必要があると、こうした認識の下、組織力の向上と、個々の職員の能力を最大限引き出し、能力を発揮できる環境整備に取り組んでまいりました。例えば、本年4月には、管理職候補の職員を中心としたワーキンググループを立ち上げ、「働き方改革」の研究に着手しましたが、実はこの動きは、DX推進と職員の意識改革や組織風土改革に取り組むためのプロジェクトチームへと現在発展しており、デジタル化による区民サー
ビスの向上と職員の働き方改革の検討等に力を発揮しております。
また、職員目線による千代田区の魅力を再発見し、ウォーカブルなまちづくりを実現するため、組織横断的に若手・中堅職員が勉強会を立ち上げております。会では、職員が持てる知識や情報を共有し、議論を重ね、地域への愛着や職員に対する誇りを醸成しております。引き続き、このような勉強会が立ち上がりやすい環境整備を推進していきたいと考えております。
今後も、適正な人員確保や年齢構成の改善を図ることはもとより、こうした職員の取組を通じて、組織力の底上げと組織の活性化を図り、強固な人員体制の構築に努めてまいります。
なお、詳細及び他の事項につきましては、関係理事者から答弁いたします。

〔清水章子ども部長からの回答〕

○子ども部長(清水 章君) 小林たかや議員の子育て・教育施策に関するご質問にお答えいたします。
まず、子どもの数の推計など基礎データの算出に関するご質問についてお答え申し上げます。
令和2年度に策定いたしました「子ども・子育て支援事業の量の見込みと確保方策」におきまして、今後5か年間の0歳から11歳までの人口推計を実施しているところでございます。
一方、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、状況は大きく変化しており、現時点において予測精度の高い推計を行うことは難しい状況にございます。
しかしながら、子どもたちの数に応じて、保育、教育環境を整備、提供することは、基礎的自治体としての責務でありますことから、改めまして、今後、園児・児童、生徒数など基礎的データの推計にチャレンジしてまいりたいと考えております。
次に、今後の保育園整備及び待機児童の状況についてのご質問でございます。
さきの第3回定例会におきまして、保育園において、0歳児から2歳児までの空き定員を補塡する補正予算をご議決いただいたところでございますが、その後、11月に入り、これまでは空きが生じていた0歳児を中心として、入所希望者数は増加傾向にあり、保育需要は変化をしている状況にございます。
一方、高齢者センター跡地に整備を進めております(仮称)子どもの森保育園神保町につきましては、現在、既存建物の地上部分の撤去工事が終了。今後、地下の基礎部分の解体工事に着手していき、令和5年4月の開園を目指しているところでございます。今後とも、近隣の皆様方に対しまして、状況を丁寧にご説明しながら、隣地でございます愛全公園の整備とともに進めてまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、希望する保育園に入所できるよう、待機児童を出さないような取組を引き続き行ってまいります。
最後に、子育て・教育施策のビジョンに関するご質問についてお答え申し上げます。
子どもたちを取り巻く環境は、日々刻々と変化しております。しかしながら、どのような社会状況におきましても、子どもたちが自ら主体的に判断し、未来を切り開くことのできる資質、能力を育みたい。そして、子どもたち一人一人の個性を尊重し、可能性を引き出すような保育、教育を進めてまいりたい、こう考えております。
このためには、コロナ禍を経験した今こそ、本区の子育て、教育施策を見詰め直し、目指すべきビジョンを改めて示すべきという小林たかや議員のご指摘につきましては、私どもも同様に考えてございます。
つきましては、今後、教育委員会内部におきまして一層の議論を深めた後に、区議会の皆様方にもお示ししてまいります。

〔佐藤尚久教育担当部長からの回答〕

○教育担当部長(佐藤尚久君) 小林たかや議員の、今後の教室数の見込み、和泉小・こども園の整備、旧和泉町ポンプ場跡地、富士見みらい館のPFIの終了、ICTを活用した今後の教育の展開について、お答えいたします。
最初に、今後の教室数の見込みについてですが、アフターコロナにおける今後の児童・生徒数の推計を実施・分析することについては、非常に重要であると認識しております。昨年度実施した推計では、引き続き児童数の増が見込まれるものの、普通教室数については、特別教室を普通教室に転用するなどの工夫で、令和5年度末までは対応できる見込みとなっております。
次に、和泉小・こども園の整備、旧和泉町ポンプ場跡地利用についてですが、和泉小学校・いずみこども園があるちよだパークサイドプラザは、老朽化や動線の混在、バリアフリー対応、学区域内の就学前人口の増加傾向などの課題があり、再整備を計画しているところです。整備に当たりましては、小学校においては、地域の児童数増や35人学級への対応をはじめ、ICT教育環境・多様な学びに対応した教育環境の確保の観点で、また、こども園においては良質な保育・教育環境の確保の観点で、現場の実情に即しつつ、それぞれの機能の確保・向上を図りながら、隣接する公園も含め、相互に連携できる施設となるよう整備計画の策定に向けた検討を進めております。
一方、旧和泉町ポンプ場跡地利用につきましては、現在のパークサイドプラザやいずみこどもプラザの機能をどうするかも含め、地域のご意見も伺いながら、地域に資する施設となるよう、丁寧な検討を行ってまいります。
次に、富士見みらい館のPFI事業についてですが、議員のご質問にもあるとおり、令和6年度末でPFI事業が満了いたします。満了に当たっては、事業内容の改善や今後の事業方式の検討に資するため、これまでの事業評価や課題等についての調査・検証を実施する予定で、現在準備を進めているところです。
最後に、資質・能力を育むために、ICTを活用した今後の教育の展開についてですが、令和3年1月に示された中央教育審議会答申「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して」におきましても、劇的に変わると言われる社会の変化を生き抜くためには、一人一人の児童・生徒の資質・能力を育成することが求められると述べられております。本区では、これまでにも、学習指導要領改訂の趣旨にのっとり、児童・生徒の資質・能力育成に向け、「主体的、対話的で深い学び」を実現した授業改善が図れるよう、努めてまいりました。
また、ICT活用能力は、身につけるべき必要不可欠な力であると捉えており、引き続き、各校における授業改善等の取組をさらに充実させ、ICT機器を児童・生徒が有効活用できるよう推進することで、千代田の子どもたちが未来を生き抜く、力強い資質・能力を身につけることができるよう取り組んでまいります。

〔原田美江子地域保健担当部長からの回答〕

○地域保健担当部長(原田美江子君) 小林(た)議員のご質問のうち、新型コロナ対策についてお答えいたします。
まず、第6波への備えについてです。
感染が急拡大したこの夏の第5波では、本区でもピーク時には自宅療養者が1日130人ほどになりました。区内の医療機関から保健所に提出される発生届が1日110件を上回ったこともあり、事務処理に追われる日々が続きましたが、陽性が確認され届出があった翌日には保健所から区民へ連絡をとれておりました。
次に、第5波において構築した自宅療養者への対応システムの実績としては、パルスオキシメーターの配送が262件、電話・オンライン診療が11件、酸素濃縮器の活用が7件、入院病床の使用が13床などがありました。
このように区内医師会や薬剤師会、協力病院との連携により構築した本区独自の対応策により、千代田区では、自宅療養中に亡くなる方を1人も出さずに第5波を乗り切りました。
対応が必要となった場合の資源は整いつつありますが、第5波においても自宅療養中の方と連絡が取れなくなるケースがあり、警察と連携する事例もございました。自宅療養中の方に気軽に状況を連絡していただけるシステム等、体制整備が課題と考えております。
これらを踏まえ、第6波に備えて、現在も定期的に医師会等と協議を重ねており、構築した対策が効果的に機能するよう情報共有を行っております。今後も感染状況に応じて、迅速に対応できるよう体制強化を図ってまいります。
次に、3回目のワクチン接種の準備状況についてお答えいたします。
国では、新型コロナウイルスワクチンの追加接種につきまして、海外での接種状況やワクチンの効果の持続期間の知見を踏まえ、2回目の接種完了から原則8か月以上空けて接種を行うという方針を示しました。
これを受け、千代田区では、先日11月22日に、今年4月までに2回の接種を終えている約1,500人の方に接種券を発送いたしました。2回目接種完了した方のうち、まずは18歳以上の方を対象としており、2回目の接種からおおむね8か月を経過する前月に、今後順次接種券を発送してまいります。
接種会場としまして、当面、優先接種をされた医療従事者が対象ですので、区内20か所ほどの医療機関での個別接種となります。多くの高齢者の方が対象となる来年2月中旬以降は、区内の4つの病院で集団接種を開始する予定でございます。
議員ご指摘のとおり、今後の感染状況によっては、接種時期の前倒しなど流動的な部分もありますので、国の動向に注視しつつ、柔軟に対応し、2回目までと同様に安全で円滑なワクチン接種が行えるよう万全の体制で準備を進めてまいります。

〔恩田浩行戸籍住民サービス担当部長からの回答〕

○戸籍住民サービス担当部長(恩田浩行君) 小林(た)議員のご質問のうち、出張所の在り方についてお答えいたします。
まず、コロナ禍で出張所が地域に果たした役割についてでございます。
コロナ禍の1年半、区の事業も、地域の行事も、中止が続きました。町会の方からは、「人と人との交流が薄れ、地域コミュニティが崩壊してしまうのではないか」と懸念する声が、高齢者の方からは、「新型コロナが怖いから外出しないが、体力の低下が心配」という声が聞かれました。出張所はそうした様々なご不安の声を聴き、必要に応じて区の所管につなぎながら、お一人お一人に寄り添った対応に努めてまいりました。

次に、デジタルとアナログが融合する新しい役割についてでございます。
区でも様々なデジタル化を推進しておりますが、地域においても、オンラインによる講座が当たり前に受け止められるようになってきており、一部の町会等ではウェブ会議も実施されています。一方で、パソコンやスマホに慣れていない方もいらっしゃいます。ワクチン接種予約の際には、保健福祉部と協力して情報提供を行うとともに、予約手続が難しい方のお手伝いをするなど、地域に一番近い窓口であることを生かして、きめ細かい対応を行いました。
今後、出張所ではデジタル化に対応できる区民館の環境整備を行うとともに、デジタル化になじめない方には、これまで同様の対面による対応も行ってまいります。
次に、出張所を地域の魅力、個性を発揮する拠点とすることについてでございます。
ご指摘のとおり、行政手続のデジタル化が進むと、出張所の窓口で取り扱う事務の多くもオンラインでの処理が可能となり、窓口の取扱い件数は減少するものと考えております。一方、区民ニーズの多様化や地域課題の復号化に伴い、地域コミュニティ支援はますます重要になると考えております。出張所は地域に最も身近な立ち位置を生かし、地域の情報を集め、地域の困りごとをつかむとともに、区の各部署とのハブとなること、また、地域の人と人、企業や学校等をつなぐことで、地域コミュニティを支援してまいります。将来的に、地域の魅力や個性を発揮する拠点となることについては、同じ思いでございます。
現在、地域で事業を行っている福祉など関係所管の実情を把握し、これからの出張所に求められる役割について検討しているところでございます。方向性がまとまりましたら、区議会にもご報告をし、ご議論を賜りたいと考えております。

〔亀割岳彦デジタル戦略担当部長からの回答〕

○デジタル戦略担当部長(亀割岳彦君) 小林(た)議員のDXの取組に関するご質問にお答えいたします。
まず、現在の取組状況と今後実現することについてでございます。
現在、行政手続のオンライン化やリモートワーク、ウェブ会議等を実現する基盤となる全庁LANシステム、財務会計や文書事務等の総合行政システム及び国が示す標準仕様を踏まえた、総合住民システムのガバメントクラウドへの移行準備等のリプレース作業を進めているところです。
リプレースに当たりましては、DXを推進していく観点から、区民サービスの利便性向上、職員の働き方や職場環境の改善など、アフターコロナを見据え、これまでとは違った観点から、抜本的な変革に向けた取組を行っております。
今年度は、その取組を実施するものとして、区のDX推進計画を策定いたします。また、オンライン手続に関する規定整備を行い、一部業務における窓口来庁予約や行政証明の交付申請などのオンライン手続の検証及び窓口キャッシュレス決済の導入を進めてまいります。
次に、全庁的なガバナンス、公文書の在り方や情報公開請求についてのご質問にお答えいたします。
現在、各部署が個別に調達・運用するシステムは庁内に約90あり、それぞれの業務の効率化を図ることを目的とし、追加開発などを繰り返しております。その際、設計、見積り段階からコストやセキュリティの確保の視点でIT推進課がチェックを行う仕組みとしており、各部署をサポートしています。
今後、DXの推進に当たりましては、各部署が主体的に区民サービスの提供の在り方や業務の進め方そのものから見直すとともに、DX推進体制を強化し、そこが全体を俯瞰しながら戦略的な視点を持って、ICTガバナンスをこれまで以上に利かせていく必要があると認識しております。
また、現在、総合行政システムのリプレースに合わせ、機密保持、改ざん防止などを含めた電子公文書の管理の在り方について検討を進めており、より確実な公文書の保存と情報公開請求への効率的な対応を図ってまいります。
次に、人材の確保や職員全体のITリテラシーについてのご質問にお答えいたします。
現在、特別区において、デジタル分野専門人材採用の制度設計を始めているところですが、区では、必要に応じて、柔軟かつ適材適所に外部のデジタル分野専門人材を確保し、知見やノウハウを活用していく考えでございます。DXに求められる人材は、デジタル化の手段を用いて、あらゆる分野における課題解決を創造するための知識やスキルはもとより、行政職員として行政の仕組みや根拠となる法令等の知識、さらには組織全体で進めていくためのスキルの両方が必要であると考えます。
職員のITリテラシーにつきましては、専門研修のみならず、IT企業勤務経験者の管理職員や常駐型PMOの専門的な知見とノウハウを活用するとともに、区におけるDX推進において、必要に応じてITコンサルを活用することにより、デジタル技術の習得と、それを手段とした業務の見直しなどを行うことにより、その向上が図れるものと認識しております。

〔古田毅行政管理担当部長からの回答〕

○行政管理担当部長(古田 毅君) 小林たかや議員の、区の組織及び人員体制に関するご質問に、区長答弁を補足してお答えいたします。
まず、人材不足の深刻化も含めた現状認識と今後の対応に関する基本的な考えについてでございます。
本区は、議員ご指摘のとおり、従来から、行政事務の効率化や民間開放などの内部努力により生み出した人的資源を、行政が担うべき分野に配置することで、行政サービスの向上に努めてまいりました。その一方で、職員の年齢構成や人材育成、さらには中途退職等による人材不足が生じるなど、大きな課題に直面しているものと認識してございます。
一例を挙げますと、本区は、複雑・多様化する行政需要に対応するため、近年は積極的に職員を採用していることにより、全職員の約半数が35歳未満の若い職員という年齢構成になっております。この出産や育児を経験する世代が安心して仕事と育児を両立できるような職場環境の整備が急務となっております。加えて、障害を持つ職員、介護が必要なご家族がいる職員等、様々な事情のある職員が、持てる力を発揮できるよう、職場環境の改善を含めた働き方改革の取組も不可欠でございます。
このような改革においては、組織力の底上げと組織の活性化を図ることが重要であるため、本年度から新たな取組として、「職員行動指針」の作成に取りかかっております。これは、各部から選出された職員で構成されたプロジェクトチームによって、「職員としてのありたい姿」や「信条」を形にするもので、意欲的な職場風土の醸成や職員の意識改革、中途退職の抑制や継続的な人材育成等につながるものとして、全庁的に取り組んでいるところでございます。
また、中途退職を選択する職員につきましては、昨今の労働力の流動化、ワークライフバランスの充実等、様々な社会情勢や価値観の変化により、増加しているのも確かでございます。
一方で、流動化により、他自治体で行政事務の研さんを積んだ人材が採用可能になることや、職務経験年数が浅いうちから多種多様な職務経験を積む機会が増加するなど、組織にとって利点もございます。
今後につきましても、引き続き、人材不足というピンチをチャンスに変えて、必要な人員確保と適切な人材育成・人材活用を進めるとともに、職員が持てる力を最大限に発揮できるような組織風土を醸成し、区民の安全・安心な生活を守る堅固な組織体制の維持・強化に努めてまいります。
次に、保健所の体制強化やデジタル化推進体制の方向性についてでございます。
議員ご指摘のとおり、コロナ禍を踏まえた将来的な保健所の体制強化や、アナログ対応の必要性も踏まえたデジタル化の推進体制等の検討は、喫緊の課題であると認識してございます。これらの課題に対応するため、保健所とデジタル戦略担当には、10月からオリンピック・パラリンピック組織委員会への派遣から帰任した職員の一部を配置し、体制を強化したところでございます。今後も引き続き、有為な人材を適切に確保し、育成に努めるとともに、専門性の高い業務は民間の力を取り入れるなど、様々な工夫により体制強化をし、継続して質の高い行政サービスを提供できるよう取り組んでまいります。