第1回定例会 ちよだの声代表質問 全文 小林たかや

H27年第1回定例会にあたり、ちよだの声を代表して、質問いたします。
まず最初に

地域コミュニティの再生について お伺いします。

最近、神田明神下を歩いていると新築のマンションや建設中のマンションが多いことに気づきます。ここは、神田明神の境内から秋葉原の再開発ビルを臨 み、かつての花柳界や料亭が軒を連ね 銭形平次 の住まいに設定された下町という歴史的な庶民の住む町でした。この地域は、秋葉原の再開発の影響が少なく 従来の戸建て木造建築が比較的多く閑静な住宅街で今でも200年以上続く老舗のうなぎ屋さんがあります。
ところが、ここ2年間で急激なマンション建設ラッシュが始まりました。対象とされる地域は万世橋地区町会連合会の神臺会です。町会内の居住状況は、H26 年4月1日現在の住民基本台帳によりますと 107世帯 162人 となっておりました。しかし、今回のマンションラッシュにより、ここ2年間で 5棟    206戸 が完成し、仮に世帯住宅に6割のマンション居住者を想定すると約250人の人口が局地的に増加することになります。

神田明神下建設マンションラッシュ!

(パネル1)
今までこの地域で生活してきた住民の2倍近くの人間がこの狭い地域に移り住んでくることになります。単独の町会として超高層マンションが一棟建つのとは違 い、地域の生活住民が増加することになります。マンション居住者と地域コミュニティ関係は、既存町会とマンション新住民との関係となり以前からコミュニ ティ上の課題を抱えながらその解決策がなかなか見出せませんでした。
人口構造と居住形態の変化により、分譲・賃貸マンションが建設され、多様なライフスタイルや価値観を持つ人が区内に住むようになったのです。新住民を受け 入れる町会としても町会のしきたりや運営方法で新住民を無条件で加入させることもできず町会への加入者が減り、また加入はしても町会活動に参加することが ほとんどなく、住民同士の交流の機会や接点が少なく、なくなっています。
今回は神田明神下を例に取りましたが、千代田区各地で同様の問題は、日々発生しておりますし、これからも次々発生していきます。マンション居住者は地域とのつながりを持つことは難しく、マンション内でもコミュニケーションを取ることが困難な現状です。
平成26 年3月に日本大学理工学部建築学科が発表した『都心居住の実態調査と都心型地域コミュニティの検討』報告書によると、マンション住民が表札を出しているの は、ポストに名前を出している人で、 263棟 6,636戸  の内、たったの22%でした。出入口のオートロックは75%、居住者は49%(世帯用は 62%と高い状況です)という現状でした。
そもそも、マンション居住者とコミュニケーションを取りたくても8割の方の名前もわからず、尋ねるにも鍵が掛かっていてほとんどのマンションに入ることも できず誰が住んでいるかもわからない現状です。マンションの半数は、住んでおらず、事業所に転用されています。これでは、健全なコミュニティをつくること が困難なのは明らかです。
最悪な事態として近い将来、首都直下地震が発生したときマンション居住者の安否確認などできず、弱者、高齢者、乳幼児などを保護することすら困難な状況が発生します。以前、議会で同様の指摘がされ、懸念が表明されたことがあります。
このとき千代田区は、その指摘を検証したのでしょうか。事態を放置してこの現象をこのままにしていたらどうなるのでしょうか。
コミュニティ面と防災面からダブルパンチでマンション住民だけでなく地域全体が持たなくなるのは、火を見るより明らかです。
区では、現在どんな対策が練られているでしょうか。一つは「ちよだマンションカフェ」と銘打ち各地域で月に2回隔月で地域別にマンションの課題などの意見 交換をして地域との関係づくりを議論する場を設けています。マンションに関する様々な課題を論議するテーブルを地域ごとに作ったと言うことですがしかし、 来年度のこの目標数値が200人とあまりにも規模が小さすぎます。福祉部では、来年度にマンション住民に対する地域福祉活動を行なうマンション地域生活協 力員を任命・配置しますが、これも30人と少ない目標です。目標値のケタが違うのではないかと目を疑います。具体的に示されたのは、この2つくらいで根本 的な対策はなされていません。マンション対策として投入したはずのまちみらい千代田が十分活動できる体制にはなっていません。区としては、地域コミュニ ティとマンション内コミュニティについては、これまでの発想を転換して取り組むと言っていますが手探りで少しづつ対応し出したのが現状です。このスピード 観では到底地域の課題を解決できるはずはありません。これから更なる分析と対策が待たれるところです。
今後は、地域コミュニティの根本を考えて対策することが必要です。都心の住み方、居住者側から見たエリアマネジメントの概念整理が必要とされる所以です。

ここで質問します。

1.千代田区の地域コミュニティとは、どういうものだと考えていますか。
基本的な考え方についてお答え下さい。

2.千代田区は、地域コミュニティと町会の関係、マンション居住者と町会の関係をどのように考えているのですか、どのように考えどのように整理されたのか、見解をお示しください。

3.町会とマンション居住者・新住民をつなぐ仕組みが必要と考えます。
これらをつなげる為に仕組みとしてのコンシェルジュが必要だと考えますがコンシェルジュの育成・配置についての区の見解は如何ですか。

4.これから建設されるマンションに対し、マンション側と継続的に情報交換を行なうようにしなければならないと考えます。マンション側は新築工事 時、販売時、賃貸時、管理時と事業者が変わることがあります。事業者の責務や情報提供に関する規定を設ける制度を考えなくてはなりません。京都市のような 「京都市地域コミュニティ活性化推進条例」などを検討し制定しては如何でしょうか。

img_0342-1.jpg

img_9172.jpg
(京都市地域コミュニティ活性化推進条例施行規則連絡調整担当者届+京都市のパンフレット)

地域コミュニティの再生は、千代田区の最大の課題であり既存の町会やマンション住民の双方にとって痛みを伴うこともあるかも知れません。
しかし、千代田区は、だれでも安心して都心居住ができるために地域コミュニティの活性化をはかる政策を積極的に進めなくてはなりません。
最後に地域コミュニティの再生の決意を区長に求め質問といたします。

次に
ICT教育について お伺いします。

行政は、横文字用語が好きです。

ひと昔は、ITとかよく使ってました。教育現場に現れた ICTとは、いかなるものかと、そこでインターネットで検索してみます。
すると、ICTとは、Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の略であり日本語では一般に”情報通信技術”と訳されるそうです。
ちなみにITとは経済産業省の用いる用語であるのに対して、ICTは総務省の用いる用語だそうです。
では、ICT教育と検索してみると
2013年12月現在、総務省および文部科学省は、「フューチャースクール推進事業」や「学びのイノベーション事業」などのICT教育推進事業を行ってお り、その成果に基づき「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン」の策定を行なっています。 政府は、2019年度までに全児童生徒に一台ずつの情報端末を整備する予定だとしているとのことでした。
先ず、ここで質問します。

1.千代田区は、 総務省および文部科学省のICT教育方針に則って各学校にパソコンやタブレットを多数配備しているだけなのでしょうか。そうでないのならば、どのような方針でITC機器の配備を実施しているかお答えください。

学校教育でICT機器を活用した授業は、子どもの主体性や関心意欲を引出し、授業への参加意欲が増し、知識・理解を深め、学力が向上するという効果 があるといわれています。また、子どもたちが社会に出るときは、世界は、凄まじい情報化社会となっているはずです。英語でコミュニケーションを取りながら ICT機器を巧みに操作し、情報を収集し、分析し、発信する、いわゆる情報を活用する能力が求められます。諸外国においても、すでに学校教育の中での ICT機器の活用は進んでおり、1人1台のタブレットの貸与や、デジタル教科書の整備等国家プロジェクトとして進めている国もあるほどです。我が国におい ても、フューチャースクール推進事業として子ども一人に1台のタブレット、無線LAN環境の整備等ICT環境を構築し、その教育的効果の検証をしていると ころであります。その成果については、「教育分野におけるICT利活用のための情報通信技術面に関するガイドライン」にまとめられています。
千代田区においては、平成26年度に教育用パソコンのリプレースを行い、小学校・中学校へ、タブレットを始めとし、1校に120台配備し、ICT教育を推 進しています。なかでも、情報教育推進校として区教育委員会から指定を受けている神田一橋中学校には、生徒一人1台タブレットを配備し、先駆的な取り組み をしているところです。なお、先のガイドラインでも本区の取り組みが紹介されています。

そこで、本区の取り組みがどのようにされているのか把握するため、区内の幾つかの学校を視察するとともに、神田一橋中学校には校舎改修後の状況も合 わせ、その配備状況と利用状況について見てまいりました。ただ、機器が導入されたばかりの時期であったため、まだ十分に授業に生かし切れていないと感じま した。そこで、私は先駆的に行っている学校も視察した方がよいと考え、先のフューチャースクール推進事業に取り組んでいる1校である横浜国立大学教育人間 科学部付属横浜中学校に、昨年11月18日に視察に行ってまいりました。
この中学校は、さすがに先進的に取り組んでいることもあり、見事にICTを授業の中で活用され、生徒もICT機器の扱いにも慣れていて、これからの授業の 在り方を見ることができました。例えば、数学の時間に、電子ペンで直接入力し、タブレットをノート代わりに使っていて、その画面が瞬時に先生を始め、他の グループでも見ることができていました。生徒は、他のグループの考えを参考にして、自分の考えを修正したりして、これまでの授業ではあり得ないスピード感 で考えの交流ができていました。また、理科の時間では、グループで「電子」のことについて調べ、レポートにしてまとめる学習をしていました。一人ないし二 人の生徒がインターネットで検索し調べ、その内容を残りの生徒がタブレット型パソコンでレポートにまとめる学習をしていました。ここでは、収集した情報か ら必要な情報の精選(せいせん)をグループ内で互いに話し合いながら、まとめるという協働学習が見事に展開されていました。
タブレットを使った授業は、これからのグローバル人材に必要な能力、例えば、進んで問題をみんなと協力して解決し、新たな価値を創造していく力を身に付け るために効果的だと痛感しました。また、このような取り組みを充実させるためには、教員の力量、学校の組織力だけでなく、ICT支援員のような専門的なス キルのある人材が必要だと感じました。横浜中学校には、2名のICT支援員を非常勤職員として雇用し、毎日ICT支援員がいる状況で、タブレットを使った 授業では毎回授業に参加していました。当然のことながら、授業は教員が進めるものですので、授業の構成や生徒への対応は教員が行っています。そのために は、教員自身もタブレットや使用するソフトの操作方法を熟知していなければなりません。この中学校では、ICT機器の操作や授業の進め方などに堪能な先生 が一人いて、その先生が中心となって進めていました。苦手な先生に対しても、その先生が他の先生に時間を見付けては教えていました。
教員とICT支援員の役割分担が明確で、授業の中身については教員が、技術的な面はICT支援員が行っていました。両者の働きがあるからこそ、生徒の学習が充実するのです。(写真パネル7枚)

img_3794.jpg  img_3366.jpg 

img_5978.jpg  img_7527-1.jpg

img_7552.jpg  img_7536.jpg

そこで、質問します。
1.ICT教育を進めていくためには、まず教える先生のスキルアップが必要だと考えます。堪能な先生はいるかと思いますが、区内の先生すべてが機器操作等 に精通しているとは思えません。そこで、区として、担当教員のスキルをアップさせるためにどのように取り組まれているのかお聞かせください。

次に、
2.視察した横浜中学校の副校長先生とICT教育の中心的な先生は、タブレットを使った授業を進めるにはICT支援員は、不可欠と言っていました。それ は、授業中のトラブルへの対応が迅速にできるからと言う理由でした。視察した授業の中でも、タブレットにトラブルが起きてICT支援員が直ぐに対応してい ました。こうしたICT機器やネットワークにはいつ何時トラブルが起きるか分かりません。また、危機管理の考えからすると、トラブルは起こりうるものとし て対応しなければならないものと考えます。本区においては、ICT支援員が月に2回ないしは4回しか派遣されていないと聞いておりますが学校は授業中のト ラブルにどのようにして対処しているのかお聞かせください。
もし、先生が対応して、授業ができない状況があるとしたならば、せっかく配備したタブレットを生徒が学習に使えない状況であり、早急に手を打たなければな らないと考えます。現に私が区立学校から話を聞くと、今のままでは十分ではないと言っています。そのことも合わせてお聞かせください。

最後に
3.タブレットを使った授業は、子どもの意欲を引き出すことは、既に実証済みです。区として、さらにICT教育を充実させるためには、学校の授業だけでは なく、学校の休み時間や放課後、家庭でもタブレットを使った学習の場を提供することも必要ではないでしょうか。せっかく一人1台の環境があるのであれば、 子どもたちに自由に使える環境を与えることも必要ではないでしょうか。例えば、休み時間や放課後に英単語の学習を自習するのに使う、佐賀県武雄市のように 反転授業を実施するなど、区独自の考えでタブレットを使った学習を展開してもいいのではないかと考えます。子どもは繰り返し学習することで、学力が定着し ます。今後、更なるタブレットの活用方法を区はどのようにお考えなのかお聞かせください。

私は、未来を担う千代田区の子どもたちが将来どんな社会が待っていようとも、どこに行っても活躍できるための力を身に付けさせなければならないと切 望しております。区としてそのことをしっかり見据え、教育を進めなければならないと考えております。その一つがICT教育です。是非、千代田区の子どもた ちが、世界へ羽ばたけるように学ぶ環境に後れを取らないよう、また、力を身に付け損なうことのないよう、取り組んで欲しいと強く願い、質問を終わります。

最後に
再開発・大規模建替え後の環境事後検証について お伺いします。

再開発や大規模建替えで高層建築物やタワーマンションが建設されると今までには考えられない環境の変化が発生します。ビルの高層化により建替え後の まちは、様相(ようそう)が一変します。駅ビルと一体化したり歩道橋でつながったりスーパーマーケットができたりして、その結果、便利で防災性の高い安全 で快適な都市空間が生み出されております。しかし、今回取り上げるのは、その反面のデメリットについてで、特に風害についてお伺いします。
風害については、これまで多くの指摘と被害の実態を行政に申し上げてきましたが、一向に改善の兆しが見えず、解決策が施されないままになっています。風害 とは、大変厄介なもので高層ビルでなくてもその影響は発生いたします。一般的に「ビル風」とは、建物が高層化することによって上空を流れる強い風が下方あ るいは建物に回りこんで吹いてくる突風のことですが日常生活を続ける上で住民にとって生活を脅かす原因となっております。
最近の事業者は、超高層建築でも風環境の事前シミュレーションで、風洞実験の費用が600~700万円もかかるため、風洞実験を行わず、経費を削減して、 コンピュータシミュレーションで済ませています。事業者の中には、該当建物に起因する風により被害が発生した場合には、修理あるいは補修などの誠意ある対 応をするという条項を建築協定に盛り込むことで、同実験を省略してしまう場合もあります。
建築協定により地域に根ざしたルールを策定することで一定の解決が図れることは間違いありません。しかし、風害を立証するのが被害者の住民であり知識も経験も乏しい住民が因果関係を立証できず、多くの場合は、地元住民が泣き寝入りさせられてしまいます。
秋葉原の再開発でも、ビル完成後の風害を指摘する声が多く聞かれました。風洞実験やコンピュータシミュレーションでは予想できなかった場所での風害が指摘 され、予想された場所でも風害発生の認識に違いがあることがわかりました。風環境を月平均値で解釈することに対し怒りと不満も出ていました。平均値で風環 境をクリアしても、瞬間風速や日々による差異で被害が出ており、これより商売上影響が出たり、歩行者に被害を与えております。現実になった風害は多くの課 題を残しています。
最近の例は、富士見1丁目計画です。ここの風環境については、コンピュータシミュレーションよる事前の再現と将来の予測が行われました。
地元住民の風害に対する要望は、計画地が子どもの通学路であり、風環境を事前、事後に測定して対策を取ってほしいという事でした。しかし、これは実行されませんでした。
富士見1丁目計画は、コンピュータシミュレーションよる風環境予測評価報告書で再現・予測調査の結果から、計画建物完成後の風環境は、建築前と比べると計 画建物近傍等で変化が認められるものの変化した個所はすべて一般的に住宅地として容認できるとされる風環境(ランク②以下)であると予測できたことで、計 画建物の設置(植栽配置を含む)による風環境の変化が、近隣住民の生活環境の保全に大きな支障を与える可能性は低いと評価されました。

img_4835.jpg  img_5925-1.jpg

(風環境予測評価報告書パネル)
要するにどこの建設説明会でも聞く当たり前のことを言って風害は、ありませんとしています。これでOKになってしまうため、現実が違っても検証はできません。
これでは、先ほどの例に挙げた秋葉原の風害と同じです。まだ、秋葉原の再開発は、事後対策は検討されただけ増しかも知れません。それでも、風害対策は完成 後では、対象地の敷地の中だけでできることはかなり限られてくるので、あとは公道で対策するしかありません。つまるところ開発の総合調整者としての区が風 害対策をやらざるを得ないのです。

ここで質問します。

1.今まで区は、事業者と風害についてどんな調整をして、どんな役割を果たしたのでしょうか、お答えください。

2.風環境については、建設前にコンピューターのシミュレーションでしか示されない場合、完成後、風害があっても測定をしないので、対策が取れませ ん。現在では完成後、風環境の検証は行われません。事業者の風環境の事前シミュレーションが正しいかどうか、条例や規則を整備して新しい取り決めを示し、 全て、事後検証を必置にすべきではないでしょうか。ご見解をお示しください。

3.今回は風環境の事後検証を問いましたが、環境事後検証は事業主側だけ の問題ではありません。区が総合調整者として開発が地域に愛されるような役割を果たさなければならないということです。区のご見解をお伺いします。

以上 区長並びに関係理事者の明快な答弁を求めて質問を終わります。